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二人救助

朝刊に大谷崩から山伏へ向かった男性二人(共に31歳)が遭難、という記事が載っていました。 
「二人とは携帯電話で連絡がとれている」とのこと。
その後、今朝9時頃、発見・救助されたというものです。

このコースは所属会のパトロールコースで、23日に大谷嶺迄のコースをパトロールしたばかりです。
パトロール結果は、「稜線付近は凍結箇所(要アイゼン)があるが、大きな問題なし」というものでした。
そして一番気になったのが携帯電話です。大谷崩周辺で携帯が繋がるのは、山伏とは反対側にある七人作りの尾根だけだからです。
何処に問題があったのか気になったので、県警救助隊から情報をもらいました。

救助隊員でもある地元梅ヶ島駐在所のF君、「最近いい加減な登山者が多いので、昨日も駐車場まで行っていました。車が二台あり(一台は遭難者のもの)ました。」とのこと。 (救助後に遭難者に聞いたところ、F君が駐車場に着いたのは二人の出発直後だったようです)

以下は救助隊長のN君とF君から聞いたこと、私が覚えている付近の状況などを突き合わせて書いてみます。

彼等は、大谷崩から山伏へは初めてだった。
二人は道路に残された、先行者の足跡を追った。 ほんの僅かで「右への矢印」があったので、それに従った。
急斜面を登った。 登りついた尾根を北へ進んだが、進めなくなり、下った。 下った所は沢で、沢を下るのは危険と判断し、救助要請。 焚き火とブルーシート?を被って寒さをしのいだ。


駐車場から道路(道幅5m)終点の登山口50mほど手前に、右へ入る道路ができています。
これは治山工事の現場へのもので、入り口に矢印が付いていたかもしれません。
二人のうち一人は「家で地図は見たが、山へは持ってこなかった」そうです。
二人の目的地・山伏は進行方向の左(西)にあるのに、どうして右(東)へ登り始めたのか? 
駐車場には、大谷崩の大きな案内看板が設置されていて登山道も表示されていて、登山口にも同様のものがあります。(因みに彼等が駐車した場所の僅か横に看板が…)
昨日は好天で、東へ急斜面(傾斜角、60度ほど)を登っているときにも、背後に山伏は見えていたはず。 
何とかなる!」と思って尾根までたどり着き、ササのまばらな小ピークを越え、1912m峰へ向かった。 猛烈なササをかき分けて登ったものの、左(西側)のガレの縁に出て進むのを止め戻ることにした。
おそらくガレが怖く、左(東)寄りに下ったのだろう。 下った所は緩やかな沢で、沢伝いに下ると、目の前がスッパリ切れ落ちていて二進も三進もできなくなり、家へ「道に迷った」と携帯で連絡。
この沢は「七段沢」といい、彼等が見たスッパリ切れ落ちた所は、落差80mの滝。 ここでは何年か前二人が落ちて死亡した場所でもある。(この時は、もう一人の同行者も近くで滑落し死亡という痛ましい遭難事案でした)
彼等は標高1400m付近の沢でビバークすることに。
彼等はコンロを持っていたようなので、焚き火をするのは容易だったかもしれない。
しかし今朝の冷え込みはかなり厳しく、山伏の西にある標高750mの井川の最低気温は-10.2度(-10℃以下になったのは15年ぶり)だからビバーク地ではそれ以下になっていただろう。 ただ幸いにも風はほとんど無かったようだし、彼等の若さも寒さに耐え生還できた一因になったかもしれない。

今回の遭難で考えさせられたのは、道標(矢印)です。 駐車場から登山口、そして「一の沢」を渡る所までに、案内板や道標も設置されています。 が、「途中の道路へ入り込む」ということは想定していませんでした。
もう少し細かく道標を!と思いもしますが、目印だらけになってしまうのも考え物だと・・・。
彼等もガイドブックを見たり、ネットで情報を仕入れていたと思います。
なぜ反対方向に登っているのにおかしいと思わないのか、これが最大の疑問です。

ご訪問戴いた皆様は、どのように思われますか?

因みに今回の救助には、県警救助隊・市消防警備隊・地元消防団の10名と県警ヘリ一機が出動しています。

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21:54 | 遭難・事故 | comments (5) | trackbacks (0) | edit | page top↑
好天で | top | 大滝 Ⅲ

comments

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 山伏さん,今回の遭難騒ぎについての意見はもっともだと思います。
 一番の問題点としている「なぜ逆方向へ?」という件ですが,そういう山もあります。
 例えば,寸又峡温泉から沢口山へ登る道は,破線路と方向が違った北寄りの方向へ行って尾根に出てから尾根通しに沢口山へ向かいます。ちなみに,ある著名な方が書いた案内書では,その破線路が登山道として堂々と描かれていて閉口しますが。
 もっとも,今回の場合は,尾根の低い部分に出て迂回していくというのとは全く違います。しかし,初めて来る人は,えてしてそんなものです。「登山口で迷う」という最もたる例の1つかもしれません。
 ですから,私の本では登山口について特に詳しく書いててるつもりです。
 
by: 松理 | 2011/02/01 19:37 | URL [編集] | page top↑
# 二人救助
山伏さんが発する情報と松理さんの安部山系を頼りになんとか山歩きしている素人です。知識、技術もないので、お二人が難しいと言うコースには行きません。そんな程度ですが道迷いが遭難の起点となる例が非常に多い事は知っています。

今回の例では事前には見たと言う地図地形が十分記憶されていなかった為、工事用の矢印に誘導されてしまったと思えます。一旦矢印を信じて行けば先に道が無くなっても、見つけられないのは自分が悪いとばかり、わざわざかすかな筋を見つけ出し「これが踏み跡か」と入り込むのでしょう。

私のような初心者では「分からん!」と、直ぐに引き返してしまうのでむしろ経験のある人だから陥ったのかも知れません。地図を持たずに行ったのも「あの山域なら少しは分かっているから」といった油断が感じ取れます。

毎週一日は静岡のどこかの山に出掛けていますが、標識は、素人には多ければ多いほど安心で、ベテランにはとても邪魔な存在になるようです。特に市岳連のピンクのテープは良く目立ち、変な言い方ですが大好きでお守りのように思えています。反対にベテランの中にはこれがうるさいと間引きしてしまう人がいるようです。

一方で、私よりもはるかに山経験が長く多い人でも道迷いされています。話を聞くと知っている場所なので、「何故そんなところで?」と、思いますが迷う時とはそうしたもののように感じます。やっぱり標識は数ではなく「有って良い処」に有るべきだと思います。
by: 春夏秋冬365 | 2011/02/02 15:19 | URL [編集] | page top↑
#
「山は登山口が判れば99%は行けます。」と山のベテランの方がご自身のブログに書いていました。GPSなんかいらない、コンパスがなくても方向は分ると私のブログにコメントしてくれてもいます。

ことほど左様に、山登りについての意見も多様なものですね。私は、山伏さんたちのやられているパトロールと目印の対策で十分だと思います。今回遭難された方も、まさか、道標や目印が不十分だったから遭難したんだなんてことは思ってないでしょう。
by: 低山 | 2011/02/05 15:24 | URL [編集] | page top↑
# 安部奥の1日で歩ける縦走を教えてください。
梅が島キャンプ場の2泊して、青笹~十枚山を歩きたいと思いますが、1日で歩くのは可能でしょうか。東京から行くので、1日は軽い山2日目に縦走をしていと思っています。十枚山、青笹山何回か登っています。よろしくお願いします。
ss
by: SS | 2011/04/11 15:13 | URL [編集] | page top↑
# Re: 安部奥の1日で歩ける縦走を教えてください。
SSさま 初めまして。 レスが遅れ申しわけありません。

青笹~十枚山の日帰り縦走は可能です。
お一人ですか?それとも? また静岡までの利用交通機関は?

自家用車一台の場合、有東木集落上部の葵高原もしくは真先峠に駐車するしか無いでしょう。
そして青笹-十枚の稜線を歩き、駐車場所に戻ることになります。 これは結構ハードな山行になると思います。
車が二台以上あれば、一台を葵高原、もう一台を中ノ段に置けば良いと思います。
いずれにしても、日が長いうちに歩かれた方が良いと思います。
更にご質問などがありましたら、メールフォームをご利用ください。
by: かたやま | 2011/04/15 18:55 | URL [編集] | page top↑

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